仕事で行き詰まったとき、上司や詳しい人へ相談できれば助かります。ただ、相談先がいつも同じ人に集中し、順番待ちになったり、「こんな初歩的なことを聞いてよいだろうか」と一人で抱えたりすることもあるのではないでしょうか。
通常の会議で「何か困りごとはありますか」と尋ねても、時間を使うことへの遠慮から話題が出ない場合があります。逆に一人の相談が始まると、発言力の強い人が答え続け、相談者が考える余地を失うこともあります。
トロイカ・コンサルティング(Troika Consulting)は、3人一組で相談者1人と助言者2人になり、短い相談を3回行って役割を交代する対話法です。リベレイティング・ストラクチャー(Liberating Structures)の一つで、全員が相談する側と助言する側を経験します。
この記事では、約30分で行う基本手順、相談テーマと質問の作り方、助言を押し付けないための約束、対面・オンラインでの実施方法を解説します。専門家を呼ぶほどではない日常的な課題から、チーム内の知恵を引き出す方法です。
この記事を読むと次のことがわかります
3人が相談者と助言者を交代して全員の課題を扱う
一組には、課題を持ち込む相談者と、話を聞いて提案する2人の助言者がいます。一つの相談が終わると役割を交代し、3人全員が一度ずつ相談者になります。
上司が部下へ答えを教える形式ではなく、同僚同士の相互支援です。異なる経験を持つ2人の視点を同時に得られ、助言する側も他者の課題から学べます。
二人の助言者が相談者の目の前で話す通常の三者面談とは、役割と時間の設計が異なります。相談者が一時的に会話から離れることで、説明や自己弁護を続けず、出てきた考えを受け取る余白を作ります。
助言者にも学習があります。自分なら当然だと思っていた進め方が別の職種では使えないことや、もう一人の助言者が異なる前提を置いていることに気づけます。相談を受ける経験が、質問と傾聴の練習になります。
全員が同じ職種でも実施できますが、部署や経験が異なる3人を組み合わせると、普段のチーム内では出ない視点を得やすくなります。専門知識が必要な課題では、少なくとも一人が背景を理解できる組にします。
この方法は、相談者へ多数決の結論を渡すものではありません。二人が別の案を出してもよく、相談者は両方を材料にして次の一歩を決めます。
通常のブレーンストーミングでは全体の課題へ案を出しますが、この方法では一人の具体的な課題へ二人が集中します。課題の所有者が明確なので、一般論ではなく本人が選べる提案へ近づけやすくなります。
相談者は課題と欲しい助けを短く言葉にする
相談者は、現在困っていること、すでに試したこと、どのような助けが欲しいかを1~2分で説明します。「チームがうまくいかない」ではなく、「週次会議で決定事項が実行されない。担当と期限の決め方について案が欲しい」と具体化します。
問題を完全に整理してから参加する必要はありません。ただし、事実と自分の解釈を分けると、助言者が状況を理解しやすくなります。
助言者は答える前に確認質問を行う
説明の直後に解決策を出すと、前提を誤った助言になりがちです。助言者はまず、誰が関係するか、いつ起こるか、何を試したか、相談者が変えられる範囲はどこかを尋ねます。
質問時間は課題を深掘りするためであり、尋問や評価ではありません。一問を短くし、相談者の答えを受けて次を選びます。
相談者が背を向けて二人の対話を聞く時間を作る
基本形では、助言者が案を話し合う間、相談者は椅子の向きを変え、会話へ参加せずに聞きます。反論や説明を一度止めることで、自分の問題について外側から語られる視点を受け取りやすくします。
背を向けることへ抵抗がある場合は、カメラを一時的にオフにする、メモだけを取るなどでも構いません。目的は相談者を排除することではなく、聞くことへ集中する時間を区切ることです。
同じ時間配分で役割を回し発言機会を均等にする
一人目の課題だけで時間を使い切らないよう、タイマーで区切ります。役職や経験にかかわらず同じ時間を持つため、普段は相談を受ける側の人も支援を受けられます。
時間内に解決しきる必要はありません。新しい見方、試せる小さな行動、次に相談すべき相手のいずれかを得られれば成果になります。
約30分の進行を準備から振り返りまで組み立てる
公式の基本形は、個人でテーマを考え、3人組で相談を3ラウンド行う構成です。人数が多くても、同時に複数の3人組を作れば全体時間は増えません。
進行役は内容へ介入するより、目的、守秘、役割、時間を明確にします。終了時に短い振り返りを行い、持ち帰る行動を本人が選びます。
最初の説明では、課題の全履歴を話す必要はありません。現在の状況、目指す状態、障害、欲しい助けへ絞ります。固有名詞を伏せても相談できる形にすると、個人情報や機密を守りやすくなります。
確認質問が続きすぎると助言時間がなくなるため、助言者は本当に結論を変える情報を選びます。「その人は何歳ですか」のように課題と関係が薄い質問を増やしません。
相談者が聞く時間には、提案を評価する記号を付ける方法があります。「すぐ試せる」「前提を確認したい」「別の人へ相談する」の三種類ほどに分けると、終了後に次の行動を選びやすくなります。
終了を急いで組ごとの成果を発表させると、守秘の約束が弱まります。全体へ共有する内容は相談者自身が決め、進行役は詳細の報告を求めません。
進行役は各部屋の会話を常時監視せず、時間と安全な運用を支えます。質問が止まったときに使える例を配布し、問題が起きたときだけ呼べる連絡手段を用意します。
タイマーが鳴った瞬間に会話を切るのが難しい場合は、残り一分を知らせます。助言者は新しい案を増やさず、相談者が持ち帰りやすい形へ短くまとめます。
準備では扱う範囲と守秘の約束を共有する
「現在の仕事で、自分が一歩進めたい課題」を持ち込むなど、範囲を示します。人事評価、健康、ハラスメントなど、短い同僚相談で扱うべきでない内容は正式な窓口へつなぎます。
組内で聞いた具体的な話を本人の許可なく外へ出さないこと、助言は命令ではないこと、記録を全体共有しないことを確認します。心理的な安全は形式だけでは生まれません。
最初の5分でテーマと欲しい助けを準備する
参加者は「私の課題は何か」「次に何をしようとしているか」「どんな助けが欲しいか」をメモします。相談者になったとき、この3点を簡潔に話します。
解決策を考えていなくても構いませんが、「アイデアが欲しい」「見落としたリスクを知りたい」「優先順位を整理したい」など助けの種類を示します。
各ラウンドは説明・質問・相談・持ち帰りに分ける
目安として、課題説明1~2分、確認質問2分、助言者同士の相談4~5分、相談者の振り返り1分とします。1ラウンド約8~10分です。
進行役は残り時間だけを知らせ、内容を急いでまとめません。助言者の相談中、相談者は役立つ言葉や試したい案をメモします。
3ラウンド後に一人一つの次の行動を決める
全員の相談が終わったら、各自が採用したい提案を一つ選びます。すべての助言を実行する必要はなく、自分の状況に合うものを本人が判断します。
全体共有では課題の詳細ではなく、「相談を受けて何が変わったか」「どんな聞き方が役立ったか」を扱います。守秘を保ちながら方法を改善できます。

良い相談テーマと助言の条件をそろえる
この手法は、答えが一つに決まる質問より、選択肢を広げたい実践的な悩みに向いています。相談者が変えられる余地があり、同僚の経験から示唆を得られるテーマを選びます。
助言者は、自分の成功例を唯一の正解として渡さないことが重要です。事実、解釈、提案を分け、相談者が選べる複数案を示します。
良い相談テーマには、相談者がまだ結論を決め切っていない余地があります。決定済みの案へ賛成を集めるために使うと、異なる提案を拒みやすくなります。何を変えてよいかを先に示します。
一方、単なる情報質問なら詳しい人へ直接聞く方が早い場合があります。「この申請の締切はいつか」ではなく、「複数の申請が重なる中で確認漏れを防ぐ方法を考えたい」のような実践課題が向きます。
助言者は、相談者が置かれた制約を軽視しないようにします。「上司に言えばよい」「人を増やせばよい」といった案は、権限や予算がなければ実行できません。確認した制約の中で小さな選択肢を出します。
提案へ過去の経験を添えるときは、結果だけでなく条件も話します。「三人の小チームでは成功したが、承認者が多い環境では未検証」のように範囲を示すと、相談者が転用可能性を判断できます。
相談者が助言を求めていない部分へ介入しないことも大切です。たとえば会議の進め方を尋ねているのに、本人のキャリアや性格へ話を広げません。欲しい助けの境界を尊重します。
相談者自身が動かせる課題へ焦点を絞る
「会社の文化を変えたい」では範囲が広すぎます。「次の振り返りで、失敗を話しやすくする問いを試したい」のように、自分が取れる行動へ近づけます。
他人を変える相談だけになると、人物批判へ流れます。相手の行動を断定せず、観察した事実と自分ができる働きかけを分けます。
確認質問と提案を時間で分ける
質問の形をした助言で「それは先に上司へ聞くべきでは?」と誘導すると、相談者は評価されたように感じます。確認時間は理解に必要な質問へ限定します。
提案時間では「私なら」だけでなく、「一つの案として」「この条件なら」と前提を添えます。実行上の負担やリスクも一緒に示します。
助言者同士は異なる案を組み合わせる
二人が同じ結論へ急ぐ必要はありません。一方が運用案、もう一方が関係者への伝え方を出すなど、異なる角度を歓迎します。
相談者の性格や能力を分析するのではなく、語られた状況と行動を対象にします。知らない背景を想像で補わず、仮説として言葉にします。
相談者は反論せず採否を後で決める
助言中に事情を説明し続けると、提案が出るたびに否定する形になりやすくなります。まず最後まで聞き、使えそうな部分と前提が違う部分をメモします。
受けた助言へ感謝は伝えても、採用を約束する必要はありません。行動の責任は相談者にあり、助言者は後から実行を迫らないようにします。
対面とオンラインで安全に継続できる形へ整える
一度の研修で終えるより、プロジェクトの節目や月例会へ短く組み込むと、相談することが特別な行為ではなくなります。ただし毎回同じ3人に固定すると視点が偏ります。
参加者の関係性や扱う課題に応じ、組分け、時間、共有範囲を調整します。上下関係が強い組では、別部署や同程度の役割で組む配慮も必要です。
初回は、参加者が比較的話しやすい業務上の困りごとを選びます。深刻な対立や評価に関わるテーマから始めると、形式への信頼がない段階で防御的になりやすいためです。
定期開催する場合も、参加を強制して個人的な悩みを持ち込ませないようにします。相談テーマがない人は、進行補助や助言者だけを経験する回を設ける方法があります。
同じメンバーで繰り返すなら、前回の助言を実行したか追及せず、「その後何を学んだか」を本人が話せる範囲で扱います。状況が変わって採用しなかった提案も失敗ではありません。
実施後は、助言内容の正しさではなく、時間配分、質問のわかりやすさ、聞く時間の安心感を振り返ります。方法の改善と個別課題の評価を混ぜないことが、継続しやすさにつながります。
チームへ導入する前に、進行役同士で一ラウンド試すと説明の曖昧さを見つけられます。特に背を向ける意味、守秘、助言時間の開始と終了を実際に確認しておきます。
対面では机を外し三脚の椅子を近づける
資料を読む会議ではないため、3脚の椅子を向かい合わせ、パソコンを閉じます。助言時間は相談者が椅子の向きを変え、聞くことに集中します。
周囲の声が混ざる広い会場では、組同士の間隔を取ります。機密性のある相談を扱うなら、別室やテーマ変更を用意します。
オンラインでは3人の小部屋と見えるタイマーを使う
ブレイクアウトルームを3人ずつ作り、手順と時間をチャットへ送ります。助言時間に相談者がカメラを切る方法を採る場合は、事前に意図を説明します。
接続が切れた人が出た場合の戻り先と、進行役への連絡方法も決めます。3人そろわない間は相談を進めず、別室との再編を行います。
人数が3の倍数でないときは4人組の役割を調整する
4人組では助言者が3人になり、相談時間が長くなりやすいため、一人あたりの発言を短くします。2人組では視点が一つになるものの、相談者と助言者を交代する簡易形にできます。
人数差で一部の人だけ相談時間を失わないよう、全体の割り振りを先に作ります。可能なら3人組を基本にします。
緊急性や専門性が高い問題は正式な支援へつなぐ
法務、情報セキュリティー、安全、健康、人事上の問題は、同僚の提案だけで決定しません。相談で論点が見つかった後、責任を持つ専門部署へ確認します。
トロイカ・コンサルティングは正式な承認や専門相談の代替ではありません。日常の知恵を共有し、次の行動を考える範囲で使います。
相談する力と助言を受け取る力をチームで育てよう
トロイカ・コンサルティングは、3人一組で相談者1人と助言者2人になり、役割を交代しながら全員の課題を扱う相互支援の方法です。約30分で、相談、確認質問、助言、振り返りを3回行います。
相談者は課題と欲しい助けを具体化し、助言者は理解のための質問と提案を分けます。助言中は相談者が聞くことへ集中し、最後に採用する行動を自分で選びます。
守秘と扱わない課題を先に決め、対面では椅子の配置、オンラインでは3人の小部屋とタイマーを用意します。まず身近な業務課題で試し、相談が一部の人へ集中しない関係を育ててみましょう。
今回のポイント


