IT業界が人材不足と言われるようになって随分と経ちますが一向に改善される兆しが見えないようです。
今後必要とされる人材の数は数十万人規模なのだとか。
業界のイメージや働きやすさなど、応募する側の意識についてはいろんなメディアでまとめられている情報があるので、今回は採用する側である企業/業界側の意識的な部分に焦点をあててIT業界がいつまでも人材不足な理由を考察してみます。
私自身がかつてエンジニアへの転職がうまくいかなかった経験もあり、少々ポジショントーク気味だとは思いますが、フリーランスで活躍している友人や数人の転職コンサルタントから聞いた話を元にしていますので、それなりに根拠のある内容となっているはずです。
業界外からの転職には閉鎖的
ある意味あたりまえな事情ではあるのですが、特に中途採用の場合、企業側は即戦力を求めます。
しかも、特定分野の相当程度以上のスキルを保有する人材を求めたがる傾向があります。
このため、独学でプログラミングを習得した方であっても業務経験がない場合には、たとえ近い業種での業務経験があろうと関係なく、採用を見送られてしまうことが多いようです。
30代以降は採用されにくい
ITエンジニア業界では長らく信じられてきた迷信があります。
それは、「プログラマーは若いほどより柔軟に問題解決方法を見つけ出せる」です。
これは、20年以上前のコンピューターウィルスの製作者や、Linuxなどの高性能なOS、高度なアプリケーションの開発者の多くが当時10代や20代の若者であったことなどから、若いプログラマーの方が優秀で、年をとるにつれ、だんだんと柔軟な思考も新しい技術を取り入れる意欲も衰えていくという説がまかり通っていたことが大きな原因だと私は考えています。
実際に、フリーランスで仕事をしている友人に話を聞いたところ、プロジェクトの参加要件として「35歳未満」「40歳未満」といった条件がつくことも珍しくないのだとか。
フリーランスとして常に第一線で活躍しているエンジニアに対してであってもそんな状態なので、転職を希望する人に対してはそれ以上に高い壁が待ち構えているのは容易に想像できるというものです。
応募者のスキルを確認するよりも業務経験を重視
もし、企業側が一定レベルのスキルを持っている人材を本当に欲しているのであれば年齢や資格・業務経験をチェックするだけでなく、スキルテストを実施するべきだと思います。
ですが、どういうわけけか、履歴書や職務経歴書は細かく見る(あたりまえですが)ものの、スキルテストについてはまったく行わない企業が多いようです。
適切なスキルを図る指標がないなど、いろいろと事情はあるのかもしれません。
しかしこういった状況のため、足切りといっては言いすぎかもしれませんが、結果として「○○年以上の実務経験者」のみの募集となってしまうのではないかと。
たしかに、スキルを図るよりもスキルがあるのがわかっている人だけを募集したほうが採用するほうも楽でしょうし。
私自身も、転職活動時に実際にWebサービスを作成して公開し、応募の際に作品として提示したことがありますが、見てから「スキルが足りない」と判断されるならまだしも、全く見てすら貰えないということが1度や2度ではありませんでした。
非エンジニア系は非正規が多いうえ、エンジニアへの転向が難しい
IT業界全体としてもそうですが、とりわけプログラミングなどの技術をそれほど必要としないヘルプデスクやコールセンターにおいては非正規雇用の方が非常に多いです。
そして、それらの職種の方の中には実に多くの資格を持っていて、データベースやネットワークインフラに精通している人が居たりするのですが(テクニカル系のヘルプデスクには結構多いです)彼らがエンジニアに転向した事例は残念ながらあまり見かけたことがありません。
以前そのような方の一人に話を聞いたことがあるのですが、30代を過ぎると資格を持っていたとしても、業務自体は未経験であることや意外にも非正規であること自体が理由で就業先でのエンジニアへの転向だけでなく転職という道も厳しいという話までありました。
あくまでごく一部の事例だとは思いますが、どうも非正規=仕事ができない、という考え方をお持ちの企業も世の中には存在しているようです。
人材不足を解消するにはどうすればいいのか
では、どうすれば人材不足を解消できるのでしょうか。
これについては、私自身は業界全体での人材育成の取り組みと個々の企業の意識改革が必要だと考えます。
それと、最近よく言われるようになったAIの活用でしょうか。
AI活用については実際に一部の保守管理などの作業で既に導入する動きは始まっており、これによってある程度の人材不足はカバーすることができるでしょう。
また、人材育成については、職業訓練など行政側での取り組みはありますが、業界主導でのそのような教育機関を作ってしまうというのも必要なのではないかと思います。
そこまでいかなくても、転職コンサルタントなどの仲介業者によるプログラムの一環として実務レベルの知識を身に付けられるような訓練を実施するなどの方法もあると思います。
ことIT業界への転職に関して言えば、僅かでも実務経験相当の教育を受けることは面接の切り抜け方や職務経歴書の書き方を指導するよりよっぽど現実的だと思います。
また、採用する側の企業についても、入社後に自社で教育を施すことにもっと前向きになってほしいです。
ソフトウェア開発の現場では、業界で共通の開発手法がいくつか存在するものの、会社ごとの作法や独自ルールというものもあるため、ベテランのエンジニアであっても、転職後にそういったローカルルールについて必ず教育を受けます。
また、会社によってはエンジニアのスキル向上や新技術の導入のため定期的に勉強会を開催しているところも多いと思います。
そういった教育の場を設けることができるのであれば、業界未経験者に対して教育を施すことも決して難しい話ではないはずです。
中途採用者へ自社で教育を施すことが当たりまえ、という考え方が一般的になれば、自学習の趣味プログラマーや周辺業種からの転職者がぐっと増えますし、何より人材の流動性も増すので、業界全体の活気ももっと増えるのではないでしょうか。

